【個人再生について】
1 小規模個人再生と給与所得者等個人再生について
個人再生手続きには,①小規模個人再生と②給与所得者等個人再生の2種類の手続きがあります。
大きな違いは,再生計画案の認可にあたって,給与所得者等個人再生の場合には,債権者の同意がいらないというところにあります。
小規模個人再生の場合,再生計画案に同意しない債権者が債権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が総額の2分の1を超えないこと(消極的同意)が必要になりますので,大口の債権者に反対され,再生計画案の認可を得られないことがありえます。
他に,利用要件その他に関し,両手続きには下記の違いがあります。
(1)利用要件
① 小規模個人再生
・ 継続的に又は反復して収入を得る見込みのある者
② 給与所得者等個人再生
・ 給与又これに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、その額の変動の幅が少ないと見込まれること
(2)弁済総額
① 小規模個人再生
ア 清算価値保証原則による下限額の算定
イ 負債額からの最低弁済基準額の算定
の両方を上回る返済額でなければなりません。
② 給与所得者等個人再生
ア 清算価値保証原則による下限額の算定
イ 負債額からの最低弁済基準額の算定
ウ 法定可処分所得の2年分
のいずれもを上回る返済額でなければなりません。
※ 可処分所得とは,収入から所得税などのほか政令で定められた生活費を控除した金額で算定方法がありますが,収入が比較的多い方の場合,小規模個人再生の場合の最低返済額より,高くなることがあり,結果,弁済額が大きくなることがあります。
(3) 再申立制限など
① 小規模個人再生
・ 制限はなく,下記の再申立制限のデメリットは有りません。
② 給与所得者等個人再生
- 申立要件として、給与所得者等再生における再生計画認可決定確定の日や免責決定確定の日から7年経過していないことという期間制限があり,また,再生計画認可決定の確定から7年以内は破産における免責不許可事由とされています。
2 手続の選択について
- 給与所得者等個人再生の場合,債権者の同意が要らないというメリットがありますが,実務上は,計画案に反対をしてくる債権者は少ないため,まずは,弁済額が一般的に低くなる小規模個人再生の申立を検討するのが通常です。
- 債権者の反対(債権者数又は債権額の過半数の反対)による不認可のリスクがある場合,そのリスクの程度や両手続きの返済見込み額の差などを基に,ご依頼者とご相談の上,手続を決定します。